ウィーンフィルのニューイヤーコンサート

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折に触れ、頭の中であの時に聴いた曲を連続再生しては、独り悦に入っている。今年2019年の指揮者は、クリスティアンティーレマンであった。ウィーンフィルニューイヤーコンサートと言えば、オーケストラがワルツとマーチを賑やかに奏で、興に乗った客が手を打ち鳴らす、どんちゃん騒ぎを想像していた。しかし、ティーレマンは、そのような華やかな曲の合間に、北海の絵、妖精の踊り、エジプトの踊り、といった繊細な曲を配して、客の注意を音楽の息づかいに集中させる。音楽の息づかいが深くなるのと同期して、客の息もゆったりと盛り上がっては沈む。演奏会の進行に連れ、客の意識はいよいよ研ぎ澄まされ、波長は漸く伸び、振幅も次第に大きくなって、天空の音楽と共に惑星の軌道を巡り出す。これを至福と呼ばずして、何を至福と呼ぶだろう。