社会的な議論の質の向上に於けるGMATの役割

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政治家と政治評論家の詭弁に接する度に、事実に基づく論理的な議論なくして、意見を異にする者の間の対話は成り立たない、と痛感する。しかし、現実には、少なからぬ国民がそれらの詭弁を詭弁と思わず、かえって詭弁の信者となってそれを拡散している。風通しのよい社会の維持・発展には、事実に基づく論理的な議論を社会に根付かせる必要がある。そのためにはMBA (経営学修士) の試験にしばしば用いられるGMAT  (経営大学院入学試験) のAnalytical Writing Assessment (論述評価) とCritical Reasoning (批判的な推論) が有効であると考える。

Analytical Writing Assessmentとは、問題文で紹介される主張の論理的な弱点を分析する論述問題である。Critical Reasoningとは、問題文を読み、その結論の根拠となり得る事実、結論の前提となっている仮定、問題文で挙げられる根拠から導かれる推論などを選択肢の中から選ばせる問題である。これらの問題は、次の2つの点で、事実に基づいて論理的に議論を運ぶ習慣を醸成する。第1に、問題文の主張が暗に前提としている仮定を評価する訓練を積むことで、日常の議論に於いても事実に基づき論理的な主張を組み立てることができるようになる。例えば、筆者のある友人は、同様の訓練を積んだ為であろう、わたしが因果関係に基づく主張をすると、原因と結果の間に実際にどのような因果関係があるかを検討するのが常である。第2に、自他の主張の前提となってはいるが言葉の表面には現れない仮定を意識に上らせることで、前提が違うが故に噛み合わない議論を噛み合わせる糸口を見出すことができる。実際、互いの主張の前提を無意識のまま検討しない為に噛み合わない議論の如何に多いことか。

上述の観察から、筆者はAnalytical Writing AssessmentやCritical Reasoningの訓練により、異なる意見を持つ者同士が実りある建設的な議論を交わし、社会生活を共にできる程度の相互了解に到達できることを信じるものである。筆者がここで展開した主張が事実と論理に立脚しているか否かは、読者の判断にお任せしたい。